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星のように明るい光を生み出すレーザー技術

人類が自分の星を作れるようになるまでは、まだ長い道のりが必要でしょう。しかし、そのための技術はすでに科学的な用途に使用されていま す。オランダ応用科学研究機構 (TNO)は、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)用の投影システムを開発しました。これは「光学鏡筒」(OTA)と呼ばれ、人工的 な星を作るための複雑な投影システムのことを言います。このレーザーの向きを正確に調整する働きをするのが、マクソンフラットモータ2台、スピンドル付き プラネタリギアヘッドおよびエンコーダから構成される高精度ドライブシステムです。

ヨーロッパ南天天文台(ESO)は、世界で最も学術的な実績を上げている天文台で、1962年の設立以来、最新技術を駆使した研究設備を天文学者や天体物理学者に提供しています。欧州での天文学研究で活躍しているのが超大型望遠鏡(VLT)で、赤外線や可視光の観測に適した条件が揃ったチリの山上に各装置が平行に設置されています。VLTは、4台の口径8.2m望遠鏡「ユニット・テレスコープ」(UT)と4台のレール可動式1.8m補助望遠鏡(AT)から構成されており、世界でも最も先端的な光学機器であると言えます。このVLT用の投影システムが、オランダ応用科学研究機構(TNO)によって開発されました。このシステムは「光学鏡筒」(OTA)と呼ばれる人工的な光を作るための複雑な投影システムで、上空の大気中にレーザーを照射して、人工の星を作成します。この光学鏡筒は「4レーザーガイド星システム」(4LGSF)の重要な要素に属しています。このシステムは補償光学システム(AOF)と呼ばれる補償光学系が装備された次世代の望遠鏡で、VLTにも導入されることになっています。4LGSFは4台の20W高性能レーザーから構成されており、地球の大気の揺らぎによって生じるVLT星像の歪み補正に役立ちます。新しいレーザーシステムによって、望遠鏡の視野も改善されます。

通常、望遠鏡は天体からの光を集め、特定の器具で焦点を合わせますが、この新しい望遠鏡ではその逆、つまり、望遠鏡を使って空にレーザー光線を投影して、光の点を作り出します。その際、レーザー光線は高度90kmの大気中にあるナトリウム層に照射されます。ナトリウムが励起されると、その部分が光り始めます。このような光は、上空90kmの高さで45mmほどの精度で作成されると言われています。この明るい光は人工的なガイド星として、その周囲の星の観測に役立ちます。こうして作られた人工の星を4つ利用することで、VLT像の鮮明度も高まります。

フィールドセレクタメカニズムに使用されているマクソン製ドライブシステム

OTAは、レーザー光線を20倍に拡大するレーザービームエキスパンダ、上下/左右に傾斜できる能動的な反射鏡、フィールドセレクタメカニズム(FSM)から構成されます。このメカニズムは、上下および左右に傾けることができるダイヤフラムスプリングとストラットの組み合わせにつながれています。FSMの反射鏡の直径は100mmで、1つの平面で直交する2本の軸を基準にして鏡面と平行に回転できます。(図2)FSMの反射鏡の回転は、レーザー光線が空に照射される角度に非対称的に縮小して反映されます。この鏡には弾性ヒンジが使用されており、セルフロック式アクチュエータによって高剛性の調整が可能です。また、必要とされる絶対精度を得るため、本体に対する鏡の向きを直接測定するセンサが装備されています。

マクソンのドライブシステムは、FSMの鏡の正確な上下/左右傾斜動作と、レーザーの空への正確な照射方向の調整を担っています。1台の望遠鏡には、FSMユニット1台あたり2個のモータが使用されます。アクチュエータの製造に際して特に重要視されたのは、ダイナミック性に対する要件でした。市場でこの要件を満たすセルフロックを備えたアクチュエータは非常に稀です。そのため、TNOはボールねじを用いたマクソンのプラネタリギアヘッド付きスピンドルドライブの標準仕様をベースとして、高精度スプリング伝達機構を開発しました。機能の仕組みについては図3をご覧ください。モータが回転すると、ナットが軟質スプリングを押し縮め、軟質スプリングの力が反射鏡の支持体とつながっている硬質スプリングに作用する仕組みになっています。軟質スプリングと硬質スプリングの剛性比は1:22です。つまり、ナットの動きは22倍に縮小されて鏡に作用します。この仕組みによって分解能は飛躍的に向上し、その一方でFSMのダイナミック特性は少ししか制限を受けません。また、FSMユニットの取り付け高さは限られているため、この用途にはブラシレスフラットモータが適しています。

2015年には、新しいレーザー技術を用いた最初の望遠鏡がチリのパラナル天文台に設置される予定です。さらにESOは、その他の望遠鏡にもこの技術を導入する計画をしています。口径約40メートルのEuropean Extremely Large Telescope (E-ELT) は世界で最も大きい光赤外望遠鏡となる予定で、この望遠鏡にもこのレーザー技術が導入されることになっています。これで人類は将来、星を今よりももっとはっきりと見ることができるようになるでしょう。

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